【JENESYS2.0】韓国青少年囲碁交流訪日研修団(2014.11.20~11.27)

JENESYS2.0の一環として、韓国全土から選抜された韓国の大学生棋士27名が韓国青少年囲碁交流訪日研修団として来日し、11月20日から11月27日までの7泊8日の日程で研修を行いました(団長:金達洙(キム・ダルス)アジア囲碁連盟事務総長)。[@pause]
一行は、「日本を感じる」という研修テーマの下、滞在中、日本と中国を含めた3か国の大学生による「日中韓大学生囲碁交流2014」に参加したほか、囲碁ゆかりの地の訪問や学校訪問、企業訪問や文化体験を通して日本の魅力を体感しました。

※「JENESYS2.0」の概要についてはこちらをご覧ください。

<日程>
11月20日(木)
羽田空港着、東京タワー見学、研修に関するオリエンテーション
11月21日(金)
企業訪問(株式会社ぐるなび)、歓迎昼食会、着付け・茶道体験
11月22日(土)
日中韓大学生囲碁交流2014(日中韓混合ペア碁・3人碁)に参加
11月23日(日)
日中韓大学生囲碁交流2014(国別対抗個人戦・日中韓混合チーム別連碁)に参加
11月24日(月)
広島県へ移動、尾道千光寺、因島水軍城見学、本因坊秀策囲碁記念館視察
11月25日(火)
広島平和記念資料館見学、平和記念公園訪問、お好み焼き作り体験、広島国際大学訪問
11月26日(水)
宮島・厳島神社見学、しゃもじつくり体験、感想報告会
11月27日(木)
関西国際空港より出国

 

今回の訪日研修団は日本で開催される「日中韓大学生囲碁交流2014」に参加する韓国の大学生ら27名です。最初に行われたブリーフィングでは、「以前から日本に一度行ってみたかったので、良い機会だと思って参加した。」と研修に参加した動機を話してくれる団員が多く、研修の目標については「日本の文化や歴史を知りたい。」、「囲碁大会で良い成績を残したい。」という意見がたくさん聞かれました。
翌日は株式会社ぐるなびの本社を訪問しました。会社概要などのブリーフィング後、社内見学の際には、明るく広いスペースの日本のオフィスに目を見張る団員たち、真剣に仕事に取り組む静けさに圧倒されている様子でした。会長室フロアではペア碁25周年のパネルが展示してありました。「碁」という言葉に、より一層、目を輝かせ、食い入るように資料を見ている団員の前に会長の滝久雄氏がおいでになりました。滝会長はペア碁の創案者でありの公益財団法人日本ペア碁協会の理事長でもあります。滝会長は気さくにペア碁を創設した背景や碁を通した国際交流、相互理解などの考えをお話してくださいました。団員は企業訪問と共に、ペア碁の歴史についても学習する機会を得たわけです。ある団員は、「企業運営をしながらペア囲碁を考案し成功、発展させてきた滝会長は素晴らしいと思った。」と感動を語っていました。

 
午後からの歓迎昼食会には、「日中韓大学生囲碁交流2014」の大会関係者の方々と大会に参加する日本人大学生8名にも御列席いただきました。日本語を話せる団員は少ないですが、お互いの自己紹介をしたり、日本について気になることを日本人大学生に質問したりと、翌日からの囲碁交流大会に向けて日韓間の雰囲気がよくなったように感じました。歓迎昼食会のあとは、団員たちが楽しみにしていた文化体験です。

  
東京都江東区にある清澄庭園で行われた文化体験、まずは着物体験です。男性は先生の指南を受けながら自分で着付けをしていきました。でも、初めての日本の着物に悪戦苦闘。上手くできないところはお互いカバーし合いながら袴の紐まで結んで着付け終了。女性は別室で振袖を着せてもらい、可愛い髪飾りをつけて登場した時は団員全員からため息がでるほど綺麗で見とれてしまいました。着物を着て日本庭園を散策し、茶道体験を行った団員たちは「茶道体験を通じて文化を大切に守っているところ、茶道の奥深さと美しさを知ることができた。」と話し、お土産にもらった足袋靴下を嬉しそうに眺めていました。

日程3日目は、いよいよ「日中韓大学生囲碁交流2014」が開かれる日です。第1日目はペア碁と3人碁を行いました。日本、韓国、中国の大学生が国籍関係なくペアと3人グループに分かれ碁の打ち合いをしました。ペア碁も3人碁も味方はいますが相談はできません。囲碁には言葉は不要、味方の気持ちを汲み取り、対戦相手の気持ちを読んで協力して進めていきます。お互いを理解し、協力し合い、自分自身の気持ちの伝え方を工夫していかなければならないところは国際交流に通じるところがあります。この日は対局が3回、それぞれ違うペアと組みました。
大会の途中、ゲストのプロ棋士らによるトークショーも行われ楽しんでいた団員たち、勝敗には関係なく、囲碁の実力レベルも問わず、参加した日中韓の大学生全員が心を開いて通じ合える場となりました。

     
翌日は引き続き「日中韓大学生囲碁交流2014」の2日目です。この日はまず、韓国と中国の大学生の国別対抗個人戦、そして、プロ棋士による日本人大学生への指導碁が行われました。その後、会場である日本棋院の施設見学が行われました。テレビで放送される囲碁対局の時に使用する「幽玄の間」に上がると、実際に碁盤の前に座り込み、プロになりきって雰囲気を味わいまた。その後に見学した囲碁殿堂資料館では、囲碁の歴史や日本棋院のあゆみが分かりやすく展示されており、囲碁の殿堂入りを果たした徳川家康などのゆかりの品を見学しました。その中でも特に興味をひいていたのは、初めて宇宙で使われたという小さな囲碁盤でした。

  
午後からは日中韓混合チーム対抗の連碁です。大きな碁盤を使用し、次の手をチーム全員で考えていきます。人数が多いとなかなかまとまらないものですが「様々な意見を交わしながら一つの手を作り上げていく」という共同作業ならではの面白さがありました。最後には、一昨日の歓迎昼食会で意気投合した日韓の学生の代表から「日韓戦をしたい!」という要望があり、急遽、日韓個人戦が開かれ、熱く楽しいバトルが繰り広げられました。2日間の囲碁交流を終え、団員からは「言葉は通じなかったが、囲碁という共通点があったので楽しめた。次は言葉を勉強してコミュニケーションをとりたいと思った。」、「碁を打ち、食事を共にするうちに日本と中国の学生と仲良くなれたことが最高の経験になった。」という感想が聞かれました。

   
「日中韓大学生囲碁交流2014」が終わった翌日は広島県に移動しました。まずは尾道市でロープウェイに乗り、山頂の千光寺を目指しました。頂上からは瀬戸内海に浮かぶ島々、しまなみ海道を一望することができます。お天気にも恵まれ、久しぶりの自然の風に団員たちの気分も一新。そこから見える因島を眺めながら小春日和の尾道をあとにしました。次に訪れたのは、因島水軍城です。南北朝から室町時代にかけて活躍した村上水軍が残した武器や古文書などが保管されている因島水軍資料館では、村上水軍から因島について、郷土の歴史を学ぶことができました。

   
また、因島は碁聖と呼ばれる囲碁の殿堂、本因坊秀策の生誕地です。一行は因島外浦にある「本因坊秀策囲碁記念館」を訪問し、木村修二館長に案内をしていただきました。本因坊秀策は韓国の囲碁界でも有名だそうで、秀策が親子で愛用したという江戸時代の碁盤や当時の囲碁免状などの貴重な品々の説明を一つ一つ熱心に聞いていました。帰り際には、お参りすると棋力上がると言われている秀策のお墓へのお参りもしっかり済ませたので団員の棋力がアップしたに違いありません。

 
翌日はボランティアガイドさんから説明を受けながら広島平和記念公園を見学しました。昨晩から降り続いた雨で足元が悪い中でしたが、真剣な面持ちで当時の広島を思い浮かべながら公園内を見学し、たくさん質問をしている姿が印象的でした。途中、韓国人原爆犠牲者慰霊碑に献花をし、世界平和を願いながら平和の鐘を鳴らしました。この後、広島平和記念資料館を見学した団員は「ここで聞いた原爆による苦痛や悲しみが心に深く刻まれた。」と感想を述べたり、「広島は単に原爆の被害を受けた場所というだけでなく、平和を象徴した町なのだと感じた。」と平和の灯を見ながら語ったりしていました。

    
お昼からは広島名物のお好み焼き作りを体験しました。エプロンに帽子をかぶり、全員で大きな鉄板を囲みスタートです。作ったお好み焼きが自分のランチになると聞いた団員は、できるだけ大きなお好み焼きを作ろうとキャベツを大盛りにしてしまい、ひっくり返すのに一苦労。それでも美味しそうにできあがった自分の作品に皆満足している様子でした。試食ランチの時間には色々な味のお好み焼きソースがありましたが、一番人気はもちろん辛味ソース。奪い合うようにして辛味ソースを試しながら「これで日本のお好み焼きが作れるようになりました。韓国に帰ったら家族に作ってあげます!」と嬉しそうに話していました。

   
お好み焼きで満腹になった後は、団員が楽しみにしていた広島国際大学・呉キャンパスへの訪問です。開会式で同大学の川上工学部長より「同じ大学生として人的交流が盛んになることを期待しています。」とご挨拶をいただき、日本の大学生との交流が益々楽しみになったという団員たちは、まず同大学の施設見学をしました。看護学部や薬学部、医療栄養学部がある同大学呉キャンパスの施設は、一般の大学と違い特別な設備が多く、どの教室でも、あれこれと興味が湧いてきます。さらに、担当教員の熱のこもった説明に団員たちはすっかり魅了されてしまい、時間が足りなくなってしまうほどでした。   

施設見学が終わると一階では、同大学の学生たちが餅つきの準備をして待っていてくれました。到着してすぐに杵を持たされた団員は、驚きながらも一振り二振り、韓国にも餅つきの文化はありますが日本とは少し違います。そんな違いを楽しむように力いっぱい杵を振りおろしているとお餅はできあがり。交流会に参加してくださった同大学の学生たちとつきたてのお餅で、きなこ餅、磯部巻き、大福などを一緒に作りました。初めはお互い緊張して無言で作っていましたが、時間が経つにつれて打ち解けてきた様子で、あちらこちらで会話の和ができていました。同大学の学生からは「勇気を出して話しかけることで様々なことを話すことができた。韓国の看護師、看護学生の実際の様子やイメージを知り、お互いの夢について話すことで、より夢への思いが深まった。」という感想がきかれ、学校訪問を終えた団員からは「学問に関する強い探究心と自国を愛する気持ちを感じた。」という意見がありました。
  

日程7日目は世界文化遺産である厳島神社を見学するため宮島へ移動しました。研修最後の見学先である厳島神社では偶然行われていた伝統婚礼や修学旅行生がお参りをしている様子を不思議そうに見ている団員や水面に浮かぶ厳島神社の姿を懸命に写真におさめている団員、これからの運勢がわかるかもとおみくじをひいている団員など思い思いに日本文化を堪能していました。その後は宮島の表参道商店街を抜けて最後の体験場所である宮島伝統産業開会では、しゃもじ作りに挑戦しました。できあがった作品は良い思い出と共に家族へのお土産として、大事に大切に持ち帰っていました。宮島では「原生林を背景にした厳島神社の神殿様式などが美しくて印象的だ。」という団員の声が多く聞かれました。

   
7泊8日の訪日研修を終えて、ある団員は「ただの隣国で特別な感情も持っていなかった日本が自分に大きな感動と驚きをくれたことがとても印象的だった。」と感想を述べており、ほかの団員からは「日本人は、感情を表わすことが苦手だが、冷たい表情の裏に温かい心を持っているかもしれないということを周囲の人に伝えたい。」、「日本に行ったことのない周囲の人たちに、日本に行くことを勧めたい。」という意見もきかれました。今後も本研修に参加した団員を通じ、研修中に体験したことを韓国内の友人、知人などに広く発信してもらう予定です。これからも積極的に日韓の架け橋となってくれることを期待しています。