【キズナ】日韓青少年共同ボランティア活動事業 訪韓プログラム(2013.2.21~2.27)

2月中旬に実施された、韓国側団員の訪日プログラムに続き、2月21日から27日までの6泊7日の日程で、日韓青少年共同ボランティア活動事業の日本側団員26名が訪韓し、韓国で研修を行いました。研修3日目からは韓国側団員30名も合流し、訪日プログラム同様、一緒に研修を進めました。
(日本側団長:大坪英里奈 特定非営利活動法人国際ボランティア学生協会職員)[@pause]

本研修は、外務省の「アジア大洋州地域及び北米地域との青少年交流(キズナ強化プロジェクト)」の一環として行われ、訪韓プログラムでは、被災地に居住している日本側団員が、東日本大震災復興に関するプレゼンテーションを行いました。さらに、訪日プログラムと同様に「地域おこし」をテーマに、両国の学生による共同のボランティア活動やディスカッションなどを行いました。

2日目、日本側団員はソウル市内の清渓川を視察すべく、まず清渓川文化館を見学し、職員の方の説明をききながら、水質汚染の問題により1960年代に姿を消した清渓川が、2005年に復元工事により市民の憩いの場としてよみがえるまでの道のりを学びました。

清渓川の歴史を学ぶ

3日目、日韓の団員は再会を果たした後、一緒に全羅北道鎮安郡へ移動し、鎮安郡村づくり研究所の具滋仁(グ・ジャイン)所長より講義を受けました。具滋仁所長からは、住民自身が内発的に村を豊かにしていくこと、専門家や政府が関与することの重要性を中心にお話がありました。団員たちからは、若者たちの教育システムについての質問や、特産品を売ってアピールすればいいのではといった意見が出ていました。
また、ハクスン里村博物館を訪問し、昔の写真など村の歴史に関する展示を見学し、この施設が高齢者のための版画教室などの地域住民のため重要な役割を果たしていることについて説明を受けました。

展示資料から村の歴史を学ぶ

4日目は、日韓の団員が共同でボランティア活動を行いました。
午前中は、「高原道」と呼ばれる道沿いにリボンをとりつける活動を行いました。鎮安郡では村同士をつなぐ道を景勝地としてアピールするため「高原道」と名付けて散歩道の復元・整備活動を行っており、そのとりくみの一つとして、リボンを設置する活動を行っています。団員たちはリボンに自分の名前やメッセージを書き、目印となる場所にリボンを結んでいました。地域おこしの取組みであるリボン設置活動を体験することは、団員たちにとって地域おこしの意義を考えるきっかけとなったようです。

思いをこめてリボンを結んでいく

午後は2グループに分かれて斗元村(ドゥウオンマウル)・元延章村(ウォンヨンジャンマウル)を訪問し、それぞれの村で韓国の民俗的なお祭り「正月大満月祭」開催のための準備を手伝いました。

1年の健康と豊作を祈るこのお祭りは、かつては韓国全土で行われていました。しかし、近年は過疎化が進んだため村単位での実施が難しく、いくつかの村が合同で行うようになりました。今回村長から村の活性化のため、是非単独開催したいという要望が研修団に寄せられ、団員がボランティアとして準備に加わり、村単独での実施が実現しました。
団員たちはわらや竹などで三角すい上に積み上げる「月の家」の骨組みを組んだり、過疎化により畑の整備ができなくなった高齢者の方の手伝いを行いました。
この日はボランティア活動のほか、団員たちは村の人たちに準備してもらった夕食を一緒に食べて、親睦も深めることができました。

祭りで燃やす「月の家」づくりをお手伝いする(元延章村)

また、各村では、村民に向けて、日本側団員が東日本大震災に関するプレゼンテーションを行いました。団員たちは写真を交えて、自らの震災体験や、震災を風化させないよう語り継いでいきたい、世界に発信していきたいという力強いメッセージを伝えました。
村の方々からは、「テレビでは知っていたけれど、実際に話を聞いてあらためて大変だったことを知った」などといった感想や、中には涙を流して話をきいている方もいました。

村の方々に向けてメッセージを伝える団員(元延章村)

その後、準備を手伝ったお祭りにも参加し、農楽団と一緒に輪になって踊ったり、「月の家」を燃やして、一年の健康と豊作を祈りました。最後に、願いを込めた色とりどりの風船を空に飛ばし、お祭りを締めくくりました。団員からは、実際に村にとけ込んで、村の活性化の一助となるボランテイア活動を体験したことで、農村の抱える過疎化などの問題を実感するきっかけとなったという感想が出ました。

5日目は、鎮安郡庁を訪問し、職員など約40名を前に、団員による東日本大震災に関するプレゼンテーションに加え、韓国側団員が訪日プログラムで被災地を訪問した感想を発表しました。日本側団員たちは、映像資料を見せながら、被災状況、復興状況、自らの被災体験やボランティア体験についても詳細に説明を行いました。また、本事業を通じて実感した、震災に関する正しい情報を海外に発信することの大切さ、ボランティアの意義、人と人とのつながりの大切さについても触れ、最後に日本の復興に関心を持ち続けてほしいこと、震災時韓国から受けた支援に関するお礼のメッセージを伝えました。

プレゼンテーションを行う団員

その後、訪韓プログラムの総括として、鎮安郡をモデルに「地域活性化について我々が共にできること」というテーマのもと、日韓混合の6グループで、ディスカッションを行い意見を出し合いました。訪日プログラムと同様に、話し合った内容を模造紙にまとめ、グループごとに発表しました。
各グループからは、特産品をブランド化して農村に人が訪れるきっかけにする、企業誘致や就労援助に力を入れ農村に移住しやすくする、若者の教育を通して地元を大事にする意識を向上させる、インターネットを通じて情報発信するといったアイデアが発表されました。また、地域おこしのPRとして、鎮安郡の特産である高麗人参と名所である馬耳山を合体させた<ゆるキャラ>を提案するグループもありました。

グループ発表で提案された鎮安郡の<ゆるキャラ>

訪韓プログラムを終え、日本側団員からは、以下のような感想が挙げられました。
「人的交流の力の大きさを感じた。ボランティア活動、ディスカッションを通じて、人と人とのつながりがすべての問題の根本的な解決につながる鍵だということに気が付いた」
「情報発信を通し、韓国の方に震災に関する正しい情報を伝えることができてよかった」
「訪日プログラムでは被災地を訪問し、訪韓プログラムでは韓国の農村の現状に触れることができた。この現状をたくさんの人々に伝えていく義務があると感じた」
「今後もSNS等を通じて、団員同士の関係を大切に育んでいきたい」

<日程>
2月21日(木)
<日本側団員>成田空港発、仁川空港着
22日(金)
<日本側団員>清渓川文化館見学
歓迎昼食会(韓国側団員合流)、サムルノリ体験、Nソウルタワー見学
23日(土)
全羅南道鎮安郡へ移動、鎮安郡村づくり支援センター見学、地域おこしに関する講義、ハクスン里村博物館見学
24日(日)
日韓共同ボランティア活動、東日本大震災復興に関する情報発信
25日(月)
地域文化体験(豆腐作り、わら工芸品作り)、鎮安郡庁訪問(東日本大震災復興に関する情報発信)、ディスカッション
26日(火)
ディスカッション報告会、感想報告会、ソウルへ移動、韓国側団員解散
27日(水)
<日本側団員>仁川国際空港から出国