【キズナ】韓国教員訪日研修団(2012.10.8~10.17)

10月8日から17日までの9泊10日の日程で韓国教員訪日研修団(第1団および第2団)計40名が来日し、研修を行いました。
(第1団団長: 具滋洪(ク・ジャホン)彌陽高等学校校長、第2団団長:金鍾雲(キム・ジョンウン)三峰初等学校校長)

本研修は、外務省の「アジア大洋州地域及び北米地域との青少年交流(キズナ強化プロジェクト)」の一環として行われ、日程中3泊4日は被災地の訪問を行い、東日本大震災からの復興の様子や現況を視察しました。[@pause]

2日目は被災地訪問を前に、東日本大震災の被災状況と復興に関して、明治大学危機管理研究センター久保善慎研究助手より講義を受けました。講義では大震災の被災状況や津波発生のメカニズムなどのほか、普段から災害に備えて対策を立てておくことの大切さを学びました。講義を聞いた団員からは、がれき処理の問題や被災地自治体が抱える問題点などの質問が出され、被災地復興の現況に対する関心の高さが見られました。

その後一行は、宮城県へ移動し、3日目に加美町立東小野田小学校と加美町立小野田中学校を訪問し、震災当時の話を聞いたり、授業見学や、教員との意見交換を行ったりしました。
東小野田小学校では、校長先生ご自身の被災体験が語られました。震災当時、古川市の学校に勤務していたという校長先生は、津波の高さに驚いて避難し生徒共に無事であったこと、避難所で過ごした1週間は食糧の不足やプライバシー空間がなく、とても大変だったことなどを詳しく話して下さいました。また、廃校となった校舎を現在も3校の学校が一緒に使っていることや、震災後の生徒へのメンタルケアに関する話もうかがいました。校長先生の被災体験の話に、団員はそのすさまじさに時折ため息をつきながらも熱心に耳を傾けていました。


【海と学校との距離を地図で確認しながら話を聞く】

次に訪問した小野田中学校では、地震発生時の学校の様子が述べられた後、今後の対策として、全国初となる防災部長をおき、防災部長が防災の備品や警備関係を担当していることが話され、学校での防災の取り組みに関し、団員は真剣に話を聞いていました。その後、団員からは震災後の勉強面、入試面での生徒への配慮について質問が出ていました。

4日目には、沿岸部で被害が大きかった南三陸町の視察を行いました。南三陸町では、団員と一緒にバスに乗った語り部により震災当時の話と現在の復興の様子や課題を聞きながら、団員は津波被害にあった場所を回りました。まず、校舎の2階まで津波が来たという戸倉中学校に行き、かなりの高さまで津波が来たことを目で確かめると、その時の人々の恐怖がどれ程だったのか想像していたようでした。次に、がれきの再利用に関する話を聞きながら、がれき処理センターを見、高く積み上げられているがれきの山が複数あることに驚いていました。その後、骨組みだけとなった防災センターに行き、津波が迫っている中でも職務を果たそうとした職員の話を聞きました。語り部の話を聞きながら涙を流す団員もおり、ある団員は「最後まで自分の任務を全うし、最善を尽くす多くの人々を見て頭が下がる思いだ」と感想文に書いていました。その後、一時避難所となっていたベイサイドアリーナに行き、震災当時のパネル写真を見ながら語り部の説明を聞いた後、「さんさん商店街」という仮設商店街にて1時間程度散策を行いました。さんさん商店街では、被災しながらも、仮設店舗で商売をしながら生活を取り戻そうとしている人々の姿を見、団員からは「希望を感じた」といった声が出ていました。


 【実際に津波が到達した地点に立ち津波の高さを実感する団員】


 【防災センター前にて語り部の話に集中する団員】

訪問終了後の団員の感想文には
「南三陸町の住民の復興の様子を通じ、日本人の強靭さを感じることができた。1年6か月という長くはない期間にがれきを片付け、仮設物を整備し、商店街を作り、道路と交通設備を復旧させた状況から、必ず復興できると確信した」
「『復旧』を『復興』に変え、この状況を賢明に克服していく日本人の様子と、今日訪問した南三陸町の痛みをずっと忘れず、韓国の生徒たちにこの体験を必ず伝えたいと思う」
「日本国民、政府、そして世界各国が人類愛で、東日本大震で甚大な被害を受けた日本の各地域に大きな関心を持ち、協力していければよいと思った」
と述べられていました。

宮城県訪問後、東京に戻り、外務省を訪問しました。外務省では訪日団代表から被災地訪問に関する報告のほか、外務省関係者との質疑応答が行われました。
この日は日本文化体験として和太鼓の体験も行いました。団員達は初めての和太鼓と、複雑なリズムパターンに戸惑いつつも懸命に取り組み、一曲を完成させていました。最後には団別に披露し合い、お互いに温かい拍手を送り合っていました。


 【団別発表の前にリズムの確認をする団員達】

6日目からは1団は愛媛県(今治市)、2団は広島県に移動し、2泊3日のホームステイと、高校訪問を行いました。
ホームステイを終え、団員からは
「日本の家庭生活を体験し、ホストファミリーとの対話を通じて、他では経験できないことを学ぶ機会となった」
「最も印象的だったのは、言葉がうまく通じなくても、一生懸命に聞き、話し、共感できる部分を探そうとされているホストファミリーの姿だった。そんな姿から、日本人の温かさを知ることができた」
「韓国で日本について読んだ本の内容とは違い、気兼ねせずにすむ温かい家庭だった。韓国についても良く知っていた」
「とてもたくさんの食事を用意してくれ、楽しませてくれてありがたかった。次は家族で再訪し、また、韓国に来たときは案内をしたい」
といった感想が述べられました。

ホームステイ後の高校訪問では、第1団が愛媛県立今治西高等学校、第2団が広島県立広島観音高等学校を訪問しました。第1団が訪問した今治西高等学校では、団員が研修前に撮影してきた自身の学校の生徒や職員室の映像を見せたり、時間割の説明をしたりしながら、学校の紹介を行いました。その後の日本側教員との意見交換会では、映像を見た日本側教員から韓国の教員の勤務体系や部活動に関する質問がなされ、団員も部活動や受験、テストの出題方式に関して質問をするなど、活発なやり取りが行われました。
第2団が訪問した、広島観音高校での訪日団員による発表では、韓国民謡「アリラン」について、歌詞の意味やリズムなどを説明し、実際に日本側教員や生徒と声を合わせて歌いました。

 【両手を使ってアリランのリズムを掴む(広島観音高校)】

9日目には1、2団が合流し、大阪市こども相談センターを訪問しました。施設見学ではカウンセリングルームや、診療所などを見学し、概要説明の後の質疑応答の時間では、団員は行動観察の方法や、相談後の成果、親や学校の先生からの相談の有無、費用に関してなど、多くの質問をしていました。

研修を終えた団員たちは、
「帰国後は宮城県で撮った写真や映像を編集し、資料を作ってHPなどで発信したい。教員なので、それぞれの科目に合わせて、情報発信をするのも手段の一つだと思う」
「語り部の方たちの話が何よりも心に迫ってきた。教員なので、語り部の方たちのように、今回の研修での体験を生徒に鮮明に語ることが何よりの発信手段だと思う」
「さまざまな地域を訪問できたことも文化体験の一つであり、良かった」
「日本ではホームステイは難しいと聞いていた。実際に行き、良い思い出になった」
と感想を述べていました。

<日程>
10月8日(月)
成田国際空港着、訪日研修オリエンテーション
9日(火)
講義、歓迎昼食会、宮城県へ移動
10日(水)
加美町立東小野田小学校、加美町立小野田中学校訪問
11日(木)
南三陸町視察
12日(金)
外務省訪問、和太鼓体験
13日(土)
ホームステイ対面式(第1団:愛媛県今治市、第2団広島県)
14日(日)
ホームステイ
15日(月)
学校訪問(第1団:愛媛県立今治西高等学校、第2団:広島県立広島観音高等学校)
大阪へ移動
16日(火)
大阪市こども相談センター訪問、能体験、全体報告会
17日(水)
関西国際空港より出国