【キズナ】韓国教員訪日研修団(第3・4団、2012.11.26~12.5)

11月26日から12月5日までの9泊10日の日程で、韓国教員訪日研修団(第3・4団)計40名が来日し、研修を行いました。
(第3団団長:鄭仁仙(チョン・インソン) 冠陽中学校校長、第4団団長:李秉允(イ・ビョンユン) 国立国際教育院研究官)

本研修は、外務省の「アジア大洋州地域及び北米地域との青少年交流(キズナ強化プロジェクト)」の一環として行われ、日程中3泊4日は被災地(宮城県)を訪問し、東日本大震災からの復興の様子や現況を視察しました。[@pause]

一行は2日目、東日本大震災被災地への訪問に先立ち、東日本大震災の被災状況と復興の概要について、明治大学危機管理研究センターの佐々木一如講師より講義を受けました。被災の状況や危機管理の原則についての説明を受け、また実際の津波被害の映像などを目にする中で一行は震災の甚大さを具体的に把握するに至ったようです。


「学校現場での防災」からイメージすることを発表する団員

その後、一行は宮城県を訪問し、翌3日目には仙台市の東部で太平洋に面する七ヶ浜町を訪問しました。
震災直後に一時390人ほどの避難所となった七ヶ浜国際村では、七ヶ浜町の国際交流員として勤務するアメリカ人女性から、外国人の視点で捉えた被災・復興体験を聞く貴重な機会を得ました。ライフラインが寸断された避難所の運営を、町のスタッフとして、町の人々と支え合いながら乗り越えた様子や、震災後に帰国する外国人が少なくない状況において、何故その後も日本に留まることを決意したのかが語られました。彼女の話を聞き、一行からは「被災地の正しい情報を理解できた。今後も日本に関心を持ち続けたい」「日本は安全だということを帰国後にアピールすることで、被災地の方々に役立つことを知ったので、実践したい」とのメッセージを贈りました。


七ヶ浜国際村のマーティ・ミックエルリースさんによる震災体験の発表

4日目は、七ヶ浜町内の小中学校を訪問し、被災時の状況や学校の防災対策を聞いたり、授業見学や生徒との交流、教員との意見交換を行いました。
汐見小学校では、地震後に校庭のフェンス脇まで津波が押し寄せるなか、児童を避難・保護した経緯、一旦、避難所となったものの、近隣の石油コンビナート火災により立入禁止の指定を受け、他の避難所へ移ることとなったことなど当時の様子が語られました。続いて、校長先生から「地震・津波の教訓から学んだ防災10の視点」と題し、平素から抜き打ちの避難訓練を行うこと、管理職以外にも複数のリーダーを設定し指揮権を確認しておくこと、子どもたちへの心のケアなど、韓国の学校現場における防災対策としても参考になる話がありました。また、同校の先生方自身も家族・親類が被害を受け、連絡がとれない状況下でありながら、児童の保護を最優先に対応してきた教員を誇りに思うとの話に姿に胸を熱くしていました。


汐見小学校での授業見学の様子

続いて訪問した向洋中学校では、震災時の説明を受けた後、4つのグループに分かれて学校現場での防災や生徒指導などについて、同校の教員と意見交換を行いました。
一行からは、震災で肉親を失った生徒の心のケアや就学支援方法、韓国では形式的になりがちな防災訓練を日本ではどのように行っているのかなど、帰国後に活用できるよう自分の身に置き換えて積極的に質問を行っていました。


2年生と一緒に韓国の民謡を歌った(向洋中学校)

宮城県での被災地プログラムを終えた一行は、東京へ戻り外務省を訪問しました。一行から被災地での活動報告を行い、質疑応答の時間を持ちました。

7日目からは、3団は愛知県、4団は香川県に移動し、2泊3日のホームステイと高校訪問を行いました。ホームステイではそれぞれの家庭で歓迎を受け、多くの団員から日本人の日常生活を知る良い機会になったとの感想が聞かれました。

3団が訪問した愛知県立木曽川高等学校では、吹奏楽部の迫力ある演奏による歓迎を受け、研修団の一行は大変感銘を受けていました。一行からは、イ・ミヨン団員が全校生徒を前に、韓国の食文化について発表を行いました。クイズ形式で紹介し、説明する方法が功を奏し、緊張気味だった生徒たちの雰囲気は徐々に和らぎ、広い体育館に驚きや笑いの声が響きました。その他校内見学や教職員との懇談を行い、団員たちは進路指導や部活動について熱心に質問していました。


学校運営に関しての質問をする団員(愛知県立木曽川高等学校)

4団が訪問した香川県立高松西高等学校では、一行から韓国の教育制度や所属する高校の概要を説明したり、意見交換を行いました。韓国では放課後も学校に残って自習学習をする生徒が多いことが紹介されると、訪問校の先生方からは驚きの声が上がっていました。


校内にある古墳を見学(香川県立高松西高等学校)

この他、3団は箕面子どもの森学園(9日目)、4団はフリースクール東京シューレ(6日目)を訪問しました。既存の学校とは一線を画したオルタナティブスクールについて学ぶ中で、韓国との共通点や相違点などをそれぞれ感じながら、授業の様子を熱心に見学したり、説明に聞き入る姿が見られました。

研修を終えた一行からは、
「被災地訪問では地域住民の復興に対する強い思いが感じられ、印象的だった」「被災地の子どもたちもみな積極的だった。明るく接してくれた姿は忘れないだろう」「個人旅行では得難い貴重な経験だった」「研修中に出会った日本人の配慮する姿勢や親切な態度に感動した」「ホストファミリーが地元に誇りを持ち、定年後も活発に地域社会や国際交流の活動を行っていることに驚いた」などの感想が語られました。

<日程>
11月26日(月)

成田国際空港着、訪日研修オリエンテーション
27日(火)
講義、歓迎昼食会、宮城県へ移動
28日(水)
七ヶ浜町視察
29日(木)
七ヶ浜町立汐見小学校、七ヶ浜町立向洋中学校訪問
30日(金)
外務省訪問、東京都内視察(第3団:浅草、第4団:東京シューレ)
12月1日(土)
ホームステイ対面式(第3団:愛知県、第2団:香川県)
2日(日)
ホームステイ
3日(月)
学校訪問(第3団:愛知県立木曽川高等学校、第4団:香川県立高松西高等学校)、
大阪へ移動
4日(火)
大阪府内視察(第3団:NPO法人箕面こどもの森学園、第4団:文化<着物着付け>体験、大阪城)、全体報告会
5日(水)
関西国際空港より帰国