【JENESYS2.0】韓国高校生訪日研修団第1・2団(2014.10.16~10.22)

「JENESYS2.0」の一環として韓国国立国際教育院で選抜、派遣された韓国高校生訪日研修団計99名が、去る10月16日から10月22日までの6泊7日の日程で研修を行いました(第1団団長:李敬容(イ・ギョンヨン)土坪高校校長、第2団団長 田甲賛(チョン・ガプチャン)京畿道教育庁奨学官)。[@pause]
「日本を感じる」という研修テーマの下、滞在中、東京都内、地方(第1団:熊本県、第2:鹿児島県)で学校訪問を行ったほか、ホームステイや文化体験など実際の体験を通して日本への理解を深めました。

※「JENESYS2.0」の概要についてはこちらをご覧ください。

<日程>
10/16(木)
到着(成田国際空港)、日本科学未来館見学、研修に関するオリエンテーション、
10/17(金)
講義、歓迎昼食会、都内見学(第1団:東京タワー)、文化体験(第2団:「江戸文字」体験)、
地方へ移動(第1団:熊本県、第2団:鹿児島県)
10/18(土)
第1団:熊本県内見学(熊本城、天草ビジターセンター)
第2団:鹿児島県内見学(鹿児島歴史資料センター黎明館、仙巌園、伝統草木染体験)
ホームステイ対面式(両団)
10/19(日)
ホームステイ先から再集合
第1団:茶道・生け花体験、村祭り参観
第2団:天然塩つくり体験
10/20(月)
学校訪問(第1団:熊本県立天草高等学校、第2団:鹿児島県立串木野高等学校)
10/21(火)
第1団:天草地域視察(有限会社苓北真珠訪問、天草ロザリオ館・大江天主堂見学、上田陶石合資会社訪問)
第2団:沈壽官窯見学(14代宗家による講義)
福岡へ移動(両団)
10/22(水)
帰国(福岡空港)

 

 一行は初日に日本科学未来館を訪れ、アシモやオトナロイドといったロボットに関する展示をはじめ、深海や宇宙探査といった日本の先端科学技術分野について触れました。  

翌日は、江戸東京博物館都市歴史研究室の市川寛明学芸員による特別講義「日本における庶民文化の伝統」を聞きました。絵画を例にとり「正統文化」と「庶民文化」の比較や、朝鮮通信使が及ぼした影響についてなど、難解になりがちな内容をわかりやすく、たくさんの画像資料を用いてお話し、日本文化に対する理解を深めました。

 一行はこのほか都内視察等のあと、1団は熊本、2団は鹿児島へそれぞれ移動しました。
 
日程3日目から6日目にかけ、各団はそれぞれの訪問地においてホームステイのほか、史跡見学や企業訪問、文化体験を行いました。
 第1団は熊本城を見学したあと、天草に移動しました。天草ではじめに、熊本県天草ビジターセンターを訪れ、天草に南蛮文化が伝来した背景やこの地域で産出される陶石についてや、温暖な気候のため動植物にも特徴が表れていることなど解説を受けました。
  

 第2団は鹿児島県歴史資料センター黎明館で、鹿児島の歴史・文化や、韓国とのゆかりについて学びました。館長がら歓迎の挨拶を受けたあと、学芸員やほかスタッフの方の案内を受け館内の見学を行いました。途中の体験コーナーでは、鎧や兜を実際に着用したり、伝統遊びを体験したりしました。

続いて鹿児島市内の名勝地「仙巌園」にて、地元名物の鶏飯を食べた後、薩摩藩領主の島津家の邸宅「御殿」の見学や庭園散策を行い、続いて訪問した「奄美の里」では奄美地方に伝わる大島紬について学び、実際に草木染を体験しました。団員たちは先々での説明に真摯に聞き入り、また体験を通して、鹿児島地方の独自の歴史や、今に伝わる特色ある文化について理解を深めました。
 

 1団・2団共に、同日夕方にホスト家族との対面式があり、1泊2日のホームステイが始まりました。 

 翌日は各家庭で過ごしたり、文化体験を行ったほか、1団がホームステイを行った天草市宮地岳地区では、ちょうど地域の秋祭りの日程とも重なり、稽古風景や祭本番の様子なども見学することができました。両団ともホームステイを終えた学生たちは、ホームステイ初日は緊張した様子でしたが、短時間ながらもあっという間に親しくなったようで、出発間際まで言葉を交わしつつ、別れを惜しむ様子が見られました。  

 ホームステイの翌日(滞在5日目)は、待ちに待った学校訪問でした。第1団は熊本県立天草高等学校、第2団は鹿児島県立串木野高等学校をそれぞれ訪問しました。

1団が訪問した天草高校では、一行が乗ったバスが学校に到着すると、交流パートナーとなる天草高生が出迎えてくれました。体育館での歓迎行事では、書道や弓道、柔道、剣道、吹奏楽などの各部の活動紹介やパフォーマンスが披露されました。韓国側からはお礼として、代表生徒による歌やダンスの他、訪日団長の特技であるオカリナの演奏が披露されました。歓迎行事の後、1,2年生のクラスに分れて、音楽、国語、英語、化学などの授業を受け、音楽の授業では日本琴の演奏を体験し、国語の授業に参加した学生は日本語のかるたにも挑戦しました。

 交流に参加した天草高生からは、「初めは緊張したが、韓国高校生と話してみると、好きなものなどで共通する点も多く仲良くなれた」、「思った以上に日本語が通じて、高校生活について話したりと楽しく過ごせた」などの感想が聞かれました。韓国高校生からは、「授業の雰囲気がとても新鮮に感じた」、「学校での交流を通じて、一期一会をそのまま体感することができた」など一日の学校滞在でも感じることは多かったようです。

 
2団が訪問した串木野高校では、当日のオリエンテーションの後、体育館で歓迎行事があり、校長先生の歓迎のご挨拶やブラスバンドの演奏の後、一行からもテコンドーの演武や韓国の民謡にあたる「パンソリ」の披露などを行い、にぎやかにスタートしました。続いて4時限目の事業では、アイスブレーキングの交流タイムとなりました。団員たちはパートナー生徒に各教室へ案内され、ゲーム形式で自己紹介をしたり、互いに質問し合うなどして過ごしました。

昼食の後、午後は英語・体育・芸術の授業に続き、地元に伝わる「串木野さのさ踊り」の体験を行いました。「串木野さのさ踊り」の体験では、地元のベテランの踊り手の方が特別講師として招かれ、一つ一つの動作の説明を受けながら、実際に踊ってみることになりました。
踊りの複雑さに目を丸くし、最初は全く様になっていなかった団員たちの踊りは、徐々にリズムに合わせてスムーズになり、1時間ほどの体験の最後は立派な踊り手になっていました。中には額に汗をして真剣な面持ちで、講師のすぐ横でぴったり合わせる団員もいるなど、大変盛り上がりました。

   
滞在6日目は、1団は天草地域で企業訪問や史跡見学、2団は「沈壽官窯」の見学を行いました。

1団は苓北町で真珠養殖を行っている苓北真珠を訪れました。真珠養殖の方法について説明を聞いた後、一人ずつ真珠貝から真珠を取り出す体験をしました。取り出されたばかりの真珠の輝きに声を上げて驚く学生もいました。
取り出した真珠は一つ一つネックレスに仕上げられて持ち帰ることができました。

一行はこの後、天草のキリシタン文化の中心ともいえる、天草ロザリオ館、大江天主堂を訪れて、この地域で信仰を守ってきた様子など学んだ他、高浜地区の上田陶石を訪問し、古くから良質な磁器の原料として使われてきた天草陶石の歴史や江戸期に天草陶石をさらに地域振興のために用いたことに由来する高浜焼の窯元を見学しました。

 
2団が訪問した「沈壽官窯」は、「文禄・慶長の役」で島津藩が当時の朝鮮から連れ帰った陶工を祖とし、今は全国にその名が知られる薩摩焼の窯元です。一行は、当日は窯元の各施設や展示品を見学したのち、十四代沈壽官氏(当基金顧問)から、薩摩焼についてやご自身の韓国に対する想い、そして日本と韓国の関係についての思いなどを聞く機会が与えられました。
十四代は団員達からの質問等に答えつつ、団員に向け「成人になったら良い仕事をするように、人生に負けないように、韓国を引導して行ってほしい」とのメッセージをくださいました。

今回の研修を通して、団員たちからは以下のような感想が聞かれました。今後は各団員がそれぞれの場所から研修成果を発信していく予定です。
・国も年齢も違ったがこんなに情が湧いたことが不思議なほどで、今はとても名残惜しいほどである。
・日本の高校生たちはみな明朗で、驚きを覚える程であった。同年齢でも、自分たちより大人びて見えた。
・日本人の公共秩序や各施設の安全対策などに感銘を受けた。学ぶべきだと考える。
・日本語が話せないので、コミュニケーションで不便に感じる部分があったが、ホームステイや学校訪問で出会った人たちの温かい心が伝わってきた。
・この訪問で韓国と日本では似ている点とそうでない点といろいろ発見できた。研修で見た日本の姿を韓国の友達に伝えて、相手に対する誤解や偏見を無くしていけるように努めたい。