【JENESYS2.0】韓国青年訪日研修団(2015/1/14~1/23)

「JENESYS2.0」の一環として、在大韓民国日本国大使館、在釜山日本国総領事館、在済州日本国総領事館で選抜、派遣された韓国青年訪日研修団計109名が、去る1月14日から1月23日までの9泊10日の日程で研修を行いました(第1団団長:李鎭遠(イ・ジンウォン)ソウル市立大学校国際関係学科教授、第2団団長 崔榮眞(チェ・ヨンジン)済州漢拏大学校ホテル調理科教授、第3団団長 魚秀禎(オ・スジョン)啓明大学校教育大学院助教授)。[@pause]
「日本を感じる」という研修テーマの下、滞在中、東京都内、鹿児島県、熊本県(第3団のみ)、大阪府、奈良県で学校訪問や企業訪問、文化遺産見学を行ったほか、ホームステイや文化体験を通して、日頃から見聞きしている日本を実際に見て感じることで、より一層理解を深めていました。

※「JENESYS2.0」の概要についてはこちらをご覧ください。

<日程>
1/14(水)
到着(成田国際空港)、研修に関するオリエンテーション
1/15(木)
文化体験(落語)、歓迎昼食会、外務省訪問、都内視察(浅草及び東京スカイツリータウンエリア)
1/16(金)
大学訪問(1団:亜細亜大学、2団:目白大学、3団:大東文化大学)
1/17(土)
鹿児島県へ移動、薩摩焼沈壽官窯及び元外相東郷茂徳記念館見学、ホームステイ対面式
1/18(日)
終日ホームステイ
1/19(月)
ホームステイから再集合・離村式、企業訪問(JX日鉱日石石油基地)、文化体験(和菓子作り)
1/20(火)
1,2団:大阪へ移動、文化体験(たこ焼き作り)、大阪市内視察
3団:熊本へ移動、熊本県立大学訪問
1/21(水)
大学訪問(1団:大阪市立大学、2団:関西大学)、
3団:熊本市内視察(熊本城、水前寺成趣園)、文化体験(木工絵付け体験)、大阪へ移動
1/22(木)
奈良へ移動、文化体験(握り寿司作り)、奈良の魅力に関するブリーフィング、日本人学生と東大寺見学(二月堂、大仏殿)、成果報告会
1/23(金)
帰国(関西国際空港)

 

本格的に日程が始まった研修2日目、まず伝統文化体験として、上方落語家で、韓国語落語の第一人者でもある笑福亭銀瓶さんによる落語をききました。会場となったお江戸日本橋亭には、座布団敷きの桟敷席が用意され、寄席の雰囲気満点の中、着物姿で高座に登場した銀瓶さんを皆拍手で出迎えました。
本格的に落語の公演が始まる前に、落語における仕草や衣装、小道具などについて、銀瓶さん直々に、わかりやすい説明があり、団員たちはこの段階ですでに落語の世界に引き込まれていました。この日は2つの演目が準備され、最初は「犬の目」(ヤブ眼科にかかり、目を犬の目に替えられてしまう話)を韓国語にて、続いて「動物園」(動物園で虎の皮を着て虎の振りをするアルバイトの話)を日本語に時折韓国語を交えてお話しいただき、終始会場には笑い声が絶えませんでした。公演のあと、「韓国語落語を始めたきっかけは」、「落語家を志した理由は」など、学生たちの質問にも答えていただき、さらに落語について理解を深めることができました。

続いて午後は、外務省を訪れ、喜多律夫北東アジア課日韓交流室長と面会しました。まず1~3団の各団の学生代表たちが、「次世代を担うものとして、研修で見聞を広め、日韓両国が互いに協力できる関係となれるように努めたい」、「今回の訪日日程には、大学訪問、ホームステイといったプログラムが用意されており、これらを通じて、日本の姿を感じ取り、たくさんの日本の人たちと交流したい」などの抱負を述べました。喜多日韓交流室長からは、「団員の皆さん、今回の日本滞在の経験を通じて、新しい発見をして、さらに日本理解を深めてほしい」との言葉が送られました。

日程中、多くの団員が楽しみにしているのが同世代との交流です。日程前半には都内にて、また日程後半には大阪、熊本でそれぞれ大学訪問を行いました。

第1団は亜細亜大学を訪問しました。盛り上がったのは1対1のペア学生同士での交流です。まず、自分のペア学生を見つけよう、と亜細亜大学の学生さんが団員の名前を呼びながら探しに来てくれ、ドキドキの対面。その後、お互いの似顔絵を色紙に書きながら、相手の出身や趣味や将来の夢をインタビューし合い、全ペア、全員の前で相手の似顔絵を見せながら、相手について紹介しました。相手の特徴をとらえた似顔絵がスクリーンに映されると、歓声や笑い声も起こり、大変盛り上がりました。ペア学生とすっかり打ち解けた後は、ペア学生を含め、A~Gの7グループに分かれてディスカッションを行いました。テーマは4グループは「理想的な大学生活」、3グループは「理想的な恋愛のスタイル」という身近な話題で、日韓で同じ点、異なる点を認識することができ、グループで出した結論を、日韓両学生が発表しました。
また、茶道体験もあり、お抹茶を味わうだけでなく、実際にお点前も体験させてもらい、慣れない作法に戸惑いながらも日本の伝統文化を日本人学生たちとともに味わうことのできる、またとない機会となりました。

第2団は目白大学を訪問しました。日本人大学生が10名程、両国の国旗を持ちながら出迎えに現れ、団員の気分も高まります。更に、メイン会場からは、澄み渡る冬の快晴のおかげもあり、窓から見える富士山の雄姿が出迎えてくれました。目白大からは日本人学生が25名参加、午前は7つのグループに分かれてキャンパスツアーを、昼食をはさんで午後からは「少子化と高齢化社会」「格差社会と就職難」「地方活性化」など、7つのグループでそれぞれ異なるテーマでディスカッションを行いました。類似した共通する課題が両国にあることを再認識することができ、共に考えていこうという姿勢を垣間見ることができました。どのグループも笑い声が絶えず、楽しい話し合いとなったようです。センター試験前日の訪問であるにかかわらず、佐藤学長・鐙屋副学長・小林国際交流センター長・金敬鎬韓国語学科長が勢ぞろいしての歓待に団員も大変喜んでいました。

第3団は、大東文化大学板橋キャンパスを訪問しました。訪問当日は大学入試センター試験前日のため休講期間でしたが、韓国学生との交流を希望した学生有志およそ35名が学生交流に参加しました。日韓の学生たちは小グループに分かれ、「日韓の共通点10項目」、「年始行事」などをテーマにディスカッションを行いました。初めはお互いに緊張した様子でしたが、日本語、韓国語を交えて話し始めると、すぐに打ち解けあっていました。午後は、日本側学生たちが準備した「人間知恵の輪」(複数のメンバーが手をつなぎ、複雑に組み合い、それを相手チームのメンバーが解くというゲーム)や日本理解のためのクイズなどのレクリエーション活動を通して、交流を深めました。

研修4日目、一行は鹿児島へ移動し、日置市東市来町美山地区を訪れ、沈壽官窯と元外相東郷茂徳記念館を見学しました。沈壽官窯では、この地で400年もの間、作りだされてきた歴代の作品に見入り、その技がどのように受け継がれ、守られているかを知ることが出来ました。訪問の最後には、第十四代薩摩焼宗家沈壽官先生の長女・清原正子さんから、「十四代は皆さんと会ってお話をしたがっていたのに、今回は会えずにとても残念にしている。皆さんの訪問の様子と皆さんの思いはしっかり十四代に伝える。400年の間、この地で同じ仕事を続けてきたことを実際に見て、理解してもらえたと思う。今度は皆さんが結婚したら是非またパートナーを連れて美山に遊びに来ていただきたい」とのメッセージをいただきました。
東郷茂徳記念館では、この美山の地で生まれ、激動の時代に外交に携わった東郷茂徳氏の生涯についても知る機会となりました。

美山地区訪問後は、いよいよホームステイの対面式です。今回は薩摩半島西部に位置する日置市、南さつま市を中心に、2泊3日のホームステイを行いました。対面式では、最初は緊張した面持ちだった団員たちも、ホスト家族の方との対面を済ませ、各団学生からの出し物:ダンス、歌を披露する頃にはすっかり会場全体が打ち解けた雰囲気となりました。

ホームステイを終えた学生の話を聞くと、『ホストファミリーの方が「鹿児島と朝鮮半島は昔から交流があった。よく魚を捕まえに対馬海峡の方に行っては朝鮮半島の南側にも立ち寄り、お嫁さんを連れてきたようなこともあった。だから、この付近には韓国人のような顔をした方も多い。言葉も焼酎のことをソジュ、公民館だってコウミングァンと、韓国語とほぼ同じ発音。本当に近くて近い国だ」とおっしゃっていたことが印象的だった』と語った団員もいれば、中には海の見える高台で酪農を営んでいる家庭でお世話になった学生は「作業服に身を包み、乳搾りや草むしりの手伝いをしたり、ペットのダチョウ、犬、馬ともたわむれることができた」、竹工芸を営む家庭へ行った学生は竹で編むバッグを作ったりと、日ごろはなかなかできない体験を行ない、いい交流ができたようです。
2泊3日間の各家庭での滞在を終え、別れを惜しみ、団員とホストファミリーが涙を流している姿を多く目にしました。そのような姿からも如何に心と心の交流ができたかを感じることができました。

研修6日目、ホームステイ離村式を終えた団員は企業見学先として、JX日鉱日石石油基地を訪問しました。ここは原油中継・備蓄基地として東京ドーム40個分に及ぶ世界最大級の広さを誇る施設で、広大な規模のため、見学は、バスに乗ったまま、同社社員の説明に沿って、原油タンク・タンカー・桟橋・タンカー排出ガス処理設備・原油パイプライン・原油精製設備など基地内を見学しました。その後、会議室にて同社紹介映像を見たほか、LNG分野において、JXグループと韓国・SKグループの事業提携を行っている点、事業所として周囲の環境や安全に配慮した取り組みについても説明を受けました。

続いて、鹿児島市観光農業公園グリーンファームで、日本の和菓子作り体験を行いました。韓国から持参したエプロンと三角巾姿となった団員たちが挑むのは、鹿児島ならではの「みかん」と「桜島大根」の練り切りです。
ひとりひとりの個性が出た練り切りが完成すると、お互いに褒め合ったり、笑いあったりした後、皆美味しく食べていました。完成した練り切りを韓国の家族に見せたいと言って、一生懸命写真に収めている団員もいました。

鹿児島での最後の日程は温泉体験です。鹿児島まで訪れて、「砂むし温泉」に行かないわけにはいきません。若い韓国の学生に砂むし温泉の良さが伝わるのかという心配もありましたが、「初めての体験だったが最高だった」、「天国に昇るくらいに気持ち良かった」など満足できたという意見も多く寄せられ、疲れや風邪などで体調を崩しかけていた団員もほぼ回復できたようです。「ゆっくり温泉に入って疲れを癒す」という日本の温泉文化を堪能できたようです。

研修7日目、1団と2団は九州新幹線で大阪に移動し、大阪のソウルフード、たこ焼き作り体験を行いました。
また、翌8日目は大阪でそれぞれ大学訪問を行いました。

第1団は大阪市立大学を訪問しました。経済学部の学生約30名と6グループに分かれ、日韓の就職事情などそれぞれが聞いてみたいことを質問しあったりしながら、グループごとにすぐ打ち解けていました。
大学訪問の後は、日本側学生も同乗して大阪の名所・通天閣に向かいました。通天閣から大阪の街の眺望を楽しみながら、交流は続きました。大阪の学生さんとの大阪市内見学は格別の思い出となりました。

第2団は関西大学を訪問しました。試験期間中であるにもかかわらず様々な学科から40名近く集まり、8つのグループに分かれて全体で3つの同じテーマ(「恋愛」、「お互いの長所について」、「将来の夢」)について語り合うディスカッションを中心にした交流が行われました。開会式では、カイト由利子教授が、個人的な留学経験や異文化との出会いの大切さ等を取り混ぜながら歓迎挨拶を述べられました。中でも、最後のテーマで、「韓国の学生は将来についてやりたい仕事がはっきりとしていて、5年、10年先のヴィジョンを持っている学生が多いのに対し、日本の学生は目先の夢を語る人が多く、未だ夢がないという学生が多かった」という発表内容が印象的でした。また、関西大学での昼食は学食で、多くの団員が日本の学食の雰囲気を満喫できたようで好評でした。大学訪問後の日程は自由研修でしたが、関西大学の学生数名が積極的に大阪の街を案内したい等と申し出てくれ、素敵な交流となったようです。

第3団は、熊本に移動後、熊本県立大学を訪問しました。歓迎セレモニー、キャンパスツアーを行った後、午後は、教養科目講義「東アジア文化圏の理解」を一般の学生たちに混じって聴講しました。日韓の食文化をテーマに講義は進められました。講義の最後、崔文姫講師の「お互いの文化や考え方において、相違点を理解しながら、相互に尊重し合い、自分の考えもしっかりと伝えることが大切」とのことばに、多くの学生たちがうなずいていました。その後、日韓の文化比較をテーマに、日韓混成の小グループに分れてのディスカッションを行いました。
大学訪問の翌日は、熊本城、水前寺成趣園を見学後、熊本市内のくまもと工芸会館にて、熊本県人吉地方の伝統工芸である「きじ馬」、「花手箱」の絵付けを職人の方の指導のもと体験しました。

研修9日目、1~3団すべて、奈良に移動し、午前中は握り寿司(8貫)作りを体験しました。日本らしいハッピが各自に用意されており、まずハッピに袖を通した団員たちは皆喜んでいました。握り寿司の歴史に関する簡単なレクチャーの後、各テーブルにスタッフの方がつきシャリの握り方、ネタのつかみ方を教わりながら、一貫ずつ握りができるたびに「らっしゃい」と元気な掛け声をかけながらみんなで楽しく作ました。握り寿司を自分で作ることができた、とそれぞれの作品を写真におさめ、昼食として美味しく食べました。

午後は奈良の文化遺産見学です。見学の前に、奈良県新公会堂会議室で、奈良県国際課の方から奈良と韓国のゆかりについて話を聞きました。その後、奈良県内を中心とする関西在住の学生たちの案内のもと、世界文化遺産・東大寺を見学しました。団員たちは奈良公園内の人懐っこしい鹿にまず驚き、南大門の金剛力士像や、二月堂の佇まい、世界最大級の木造建築である大仏殿や大仏に目を見張っていました。

東大寺見学後、訪日研修成果報告会を行いました。各団代表者が約15分間ずつ、研修の合間に皆で協力して作り上げた映像資料を元に、プレゼンテーションを行いました。1団は自分たちが発見した研修を通して発見した点や、驚いた点、印象に残ったことに関して、例えば店員の親切さや箸のマナーなど、団員のインタビューも交えて発表しました。2団は大学訪問やホームステイなど具体的なエピソードを挙げながら、最後に、今回の経験を大事に、今後自分たち自身が民間外交官として日韓の交流に携わっていきたいというメッセージがありました。3団は、熊本県での大学訪問や見学や文化体験に焦点を当てつつ、日程中に出会った人たちの心の温かさが印象に残ったことにも触れ、研修で培ったことを土台に、日韓双方の若者が手を取り向き合っていくことが大切であると発表しました。

発表をきいた日本人学生からは、国と国というより、人と人との交流が大事だと思った。これからも韓国の人と交流していければという感想が述べられ、それを聞いた訪日団員たちもうなずいていました。

今回の研修を通して、団員たちからは以下のような感想が聞かれました。今後は各団員がそれぞれの場所から今回の研修成果を発信していく予定です。研修にご協力下さいました関係者の皆様に、改めまして御礼申し上げます。

・今回の研修で感じ、学んだ日本の文化や礼儀正しさを伝えていきたい。
・全ての日本人が反韓的ではないということがよくわかった研修であった。
・日本人に接することなく、ちゃんと理解している訳でもないのに、「日本人はこうだ」と決めつけることがいかに過ちであるか実感できた。同じような誤解をしている韓国人にそうではないと伝えていきたい。
・ホームステイや学生との交流を通じて日本人の考え方が少しはわかるようになった。
・日本人の友人と家族ができて嬉しい。
・鹿児島と大阪の滞在を通じて日本の方言の面白さに興味を持つようになった。
・個人旅行では決してできない経験をすることができ本当に感謝の思いでいっぱいだ。
・来日前は、日本は反韓感情が強いと個人的にも、周りもだいぶ心配していたが、この10日間全然そんなことは感じなかったし、むしろ日本と日本人への好感が高まった。
・学生交流で一番強く感じたのは、韓国人は自分のスペックを積み重ねていき、それに見合った仕事は何だろうという姿勢で職を探すのに対し、日本人の多くは自分のやりたい仕事を最初に決めていて、それを目標に自分を磨いていこうとする姿勢が新鮮だったことだ。
・来日前は、日本文化は好きでも正直対日感情はよくなかったが、来日して変わった。やはり、報道や周辺の意見に振り回されていらし、まさに「百聞は一見にしかず」だ。