【JENESYS2.0】韓国青年訪日研修団(2015.2.3~2.12)

「JENESYS2.0」の一環として、在大韓民国日本国大使館、在釜山日本国総領事館、在済州日本国総領事館で選抜、派遣された韓国青年訪日研修団計110名が、去る2月3日から2月12日までの9泊10日の日程で研修を行いました(第1団団長:鄭基梡(チョン・ギワン)光州東成中学校日本語教師、第2団団長:蔣春姬(ジャン・チュンヒ)新道林中学校日本語教師、第3団団長:金孝淑(キム・ヒョスク)新亭女子商業高校 日本語教師)。[@pause]
「日本を感じる」という研修テーマの下、都内や地方でのホームステイや日本企業の訪問、学校訪問での交流活動や文化体験を通し、見聞きするだけではない、実際に体験することを通して日本についての理解を深めました。

※「JENESYS2.0」の概要についてはこちらをご覧ください。

<日程>
2/3(火)

到着(成田国際空港)
2/4(水)
オリエンテーション、歓迎昼食会、都内視察、外務省訪問
2/5(木)
1・2団:文化体験(着付け、能楽体験)、施設見学、3団:関東国際高等学校訪問
2/6(金)
1団:鳥取県へ移動、鳥取敬愛高等学校訪問、ホームステイ対面式、2団:明治学院中学校/東村山高等学校訪問
3団:愛媛県へ移動、企業訪問(井関松山製造所)、道後温泉街散策
2/7(土)
1団:終日ホームステイ、2団:大阪へ移動・ホームステイ対面式、3団:松山城見学・ホームステイ対面式
2/8(日)
ホームステイ
2/9(月)
1団:企業訪問(リコーインダストリアルソリューションズ(株)鳥取事業所)、鳥取砂丘見学、大阪へ移動
2・3団:学校訪問(2団:兵庫県立芦屋高等学校、3団:愛媛大学附属高等学校)
2/10(火)
1団:学校訪問(兵庫県立加古川南高等学校)、2団:見学(清水寺、京都マンガミュージアム)、和食作り体験
3団:文化体験(和太鼓、お好み焼き)、大阪企業家ミュージアム見学
2/11(水)
1団:大阪城見学、文化体験(和太鼓、お好み焼き)、2団:文化遺産見学(金閣寺、大阪城)、和太鼓体験
3団:文化遺産見学(清水寺、金閣寺)、着付け体験、全団:感想報告会
2/12(木)
帰国(関西国際空港)

 

初日は各公館から集まった団員同士、顔合わせも含めて今回の研修で得たいこと、目標をお互いに発表し合いました。
研修は一橋大学商学研究科の松井剛教授による講義からスタートしました。講義は「日本産マンガのグローバル・マーケティング:北米市場に注目して」というタイトルで行われ、2000年代のアメリカにおける日本産マンガの人気上昇と低下の原因について学びました。北米でのマンガ出版の際には日本のマンガをそのまま出版するのか、もしくは現地の文化に合わせて出版するのかを決める「ゲートキーパー」の役割を出版社が担っていることが語られ、教授から団員に向けて「ぜひ学生の時に留学をして、みなさんがゲートキーパーとなって文化を紹介し、つなげる役割を担ってほしい」とのメッセージが送られました。

その後の外務省訪問では、三公館の代表学生より、研修への意気込みが語られました。在韓国日本国大使館から派遣された徐恵敏(ソ・ヘミン)団員は、「今回の研修を通して学び、発見したいことは三つ。一つ目は日本の文化。古代から現代にかけての日本の歴史的な流れと伝統文化について学びたい。二つ目は日本の学生との交流。学生との交流から両国について理解を深める時間としたい。三つ目は日本人について。ホームステイを通じて家庭での生活を体験しながら多様な日本人の魅力を発見したい。」と目標を述べました。

翌日、1・2団は着付け体験と能楽体験を行い、3団は学校訪問を行いました。
着付け体験では着物を初めて着る団員が多い中、襦袢から帯を結ぶまで自分達で行いました。団員たちは先生の説明を真剣に聞き、額に汗をかきつつなんとか全員着物を着ることができました。
 

3団は関東国際高等学校に訪問しました。到着後、歓迎式を行ったあと、すぐに授業に参加しました。外国語コースが設置されている高校であるため韓国語、タイ語、ベトナム語といった授業もあり、バラエティに富んだ授業体験となりました。特に韓国語の授業は韓国の学生1人1人が日本の学生の先生となり一緒に課題に取り組んでいる姿が印象的でした。昼食はランチタイムフィールドワークと題して日韓の学生がグループになり食事を取りました。それぞれ食べたものの写真を撮り、感想とともに発表するというプログラムでしたが、メニューはラーメンが一番人気で、とてもおいしかったという感想が多く聞かれました。食事とともに写真に写っていた団員はとてもいい笑顔で、日本の学生と楽しい時間を過ごしたようでした。

4日目には1・3団はホームステイを行う地方へ移動しました。
1団は鳥取県にある鳥取敬愛高校を訪問しました。学校に到着すると1・2年生全員による拍手と花道で大歓迎を受けました。歓迎式後の授業体験では団員3、4人が一グループとなり各クラスに入って授業に参加しました。授業は主に班活動で進行し、数学では日韓の学生が協力して一緒に問題に取り組み、英語や社会の授業では日韓の文化の違いなどを話し合いました。授業体験を終えると団員からは「メリハリのある授業だった」「学生が親切に話しかけてくれた」といった声が聞かれ、研修中初めての同世代との交流に団員も興奮していました。学校訪問後は、同校生徒及び県内の方のお宅で2泊3日のホームステイを行いました。

3団は愛媛県へ移動し、企業訪問を行いました。
松山市にある農業機械の会社である井関松山製造所を訪問し、会社概要の説明を受け、工場の見学をさせてもらいました。団員にとっては普段あまり縁のない農業機械ですが、目の前でトラクターが組み立てられる姿を見ると興奮した様子で「このような会社で働きたい」といった声も聞かれました。ギャラリーでは実際にトラクターに乗ることもでき、それぞれ夢中になって写真を撮っていました。質疑応答では、「トラクターの値段はいくらか」「社員寮はあるのか」といった多様な質問が出るなど、とても関心を持っている様子でした。

一方2団は都内で明治学院 中学校/東村山高等学校を訪問しました。バスが到着すると胸に韓国語で名前を書いた同校3年生の生徒が団員を出迎えてくれました。歓迎レセプションの後は8グループに分かれ、同校生徒が校内を案内してくれた後、調理室で大福の作り方を教えてもらいながら、みんなで一緒に作りました。お昼にはカフェテリアで学食体験をしながら大福をいただきました。午後は体育館で男子はバスケットボール、女子はドッジボール、日韓混合チームで思い切り汗を流しました。最後に2年生の英語の授業に参加した時には、話す言語を問わず、グループ別に自己紹介とフリートーキングを楽しみました。バスに乗る前に団員たちは「日本に来てから一番楽しかった」「時間が短すぎる」「まだまだここに残りたい」と別れを惜しんでいました。
 

ホームステイ明けの7日目、2団は兵庫県立芦屋高等学校、3団は愛媛大学附属高等学校を訪問しました。
ホームステイ先から制服で集合した2団団員はホストの皆さんとの別れを惜しむ間もなく兵庫県立芦屋高等学校に向かいました。その体育館では全校生徒720名が集まり大歓迎レセプションが行われ、団員はお礼に韓国笛でアリランを演奏しました。その後、同校生徒と団員が1名ずつペアになりにペア生徒の授業に一緒に参加しました。通常の授業を受けるのは難しいかなと思いましたが、団員の真剣に取り組んでいる姿がとても凛々しく見えました。お昼はペア生徒に加えて韓国語同好会の生徒なども集まり賑やかな交流時間となりました。午後からは和菓子とお抹茶をいただきながら同校生徒による琴の演奏、書道パフォーマンスなど、日本文化も体験できる交流会が開かれ和気藹々とした雰囲気で訪問を終えました。
       

3団は愛媛大学附属高等学校を訪問しました。はじめに行われた歓迎式では簡単なクイズと吹奏楽部の演奏、韓国語での学校紹介を聞きました。部活動があまり行われていない韓国の学生にとって吹奏楽部の演奏はとても新鮮に映ったようで、特に「アリラン」と日本の童謡「赤とんぼ」を1つにした曲を聴いたときは感動で涙が出たと言っている団員もいました。歓迎式後は授業に参加し、英語・生物・情報などの科目を体験しました。生物ではウニの人工授精の実験を行いましたが、教科書で学ぶのではなく、実際に目で見る内容であったため、理解がしやすかったようです。午後は日韓混合チームでバレーボールと卓球のトーナメントを行い、交流を深めました。試合の合間には午前中に行ったアイスブレーキングの続きでゲームも行われ、とても盛り上がっていました。

翌日には1団が兵庫県立加古川南高等学校を訪問し、日本の学生との交流を行いました。同校では韓国語の授業を履修している学生35名が1対1のパートナーとして終日同行してくれ、ペア同士仲を深めていました。授業体験では3つのグループに分かれて書道・箏曲・茶道の授業から2つを体験しました。茶道では茶道部の部員に教えてもらいながら自分でお茶を点て味わいましたが、「美味しい」といった声が多く聞かれました。学校に茶道部があり、授業で学べることについて団員からは「昔から伝えられている文化を授業や部活動で学ぶということが不思議でもあり、羨ましい」といった感想が出ていました。書道では「春」という字を練習しました。筆の扱いに慣れていない団員も多く、日本の学生に教えてもらいながら短時間で立派な「春」を書き上げていました。

研修後半になると各団京都や大阪で文化体験や文化遺産の見学を行いました。
全団が行った和太鼓体験では活気に満ちた講師と和太鼓の重みのある音に団員のやる気も一気に上がり、いきいきと太鼓を打っていました。真剣に取り組むあまりバチを持つ手にマメができる団員や、休憩時間の時にも団員同士でリズムの確認を行う団員も多くいました。
   

2団は大阪・京都で世界遺産の清水寺や金閣寺をめぐり日本の歴史や伝統の力を感じ、京都国際マンガミュージアムで現代の日本カルチャーに触れました。また、実際に日本料理作りにも挑戦しました。5人1組で力を合わせて茶わん蒸しや鮭の照り焼き、せいろそばを作り、それぞれのお昼ご飯になりました。「今まで食べた日本料理の中で一番美味しい!」と大喜びで完食する団員もいました。
         

3団は大阪でお好み焼き作り体験をしました。店員さんの説明を聞きながら、生地とキャベツを混ぜるところからはじめ、順番にエビや豚肉などの具材をのせていきました。焼けるまでは触らずに気長に待たなくてはいけないのですが、お腹も空いており、焼けたかどうかが気になるのか、ついついヘラで触ってしまう姿があちこちで見られました。「目の前にお好み焼きがあるのに、まだ食べられないなんて拷問だ~」と言いながらも、おいしく、見た目もいいものを作ろうと慎重にひっくり返し、4種類あるソースにもこだわってそれぞれオリジナルのお好み焼きを完成させていました。
 

今回の研修を通して、団員たちからは以下のような感想が聞かれました。今後は各団員がそれぞれの場所から今回の研修成果を発信していく予定です。

・ 日本で感じた様々な魅力を伝えたい。今回の研修を通じて日本に対する関心がより深まり、これからも継続的に関心をもち両国の文化交流に尽力したい。
・ インターネットを見ると両国民はお互いをあまり好きではないように見えるが、事実ではなかった。日本に来て日本人の助け、温かい微笑みをたくさん受け、心が痛む別れも多かった。国、文化が違ってもお互いに大切に思い合いながら未来に向かって行かなければならない。
・ 日本人の用意周到さが印象深い。各訪問機関、企業、学校などどこを訪問しても関係者の方からは韓国の学生たちがより楽に過ごして帰れるよう、事前に準備し待っていてくれた。
・ 韓国より情が薄いと思っていたが、訪問先での日本人はいつも笑顔を絶やさないのが印象的だった。なかでも、ホームステイホストが自分を家族のようにむかえてくれ、別れの時は涙が流れるほど感動し、この体験を通して日本人に対する自身の考えが180度変わった。
・ 訪日前はただの隣国だと思っていたが、日本を訪問したらよく似ている文化、家族、考え方を共有している一つの友達国家であることに気付いた。
・ 訪日前はテレビやニュースなどの政治的・歴史的問題のせいで日本への拒否感や日本のイメージがとても良くなかった。しかし、今回の研修で日本人の人間性や文化、人々との交流を通して日本という国に魅力を感じた。
・ ホストと政治、経済、入試制度、歴史についてたくさん話をした。私たちはとても似ているけれど、考え方や歴史の見方、行動方式に違いがある。互いがその違いを理解すればよい関係を築けるのではないかと感じた。
・ 個人主義で冷たいイメージがあったが、それは他人に迷惑を掛けないようにするためだと気付いた。
・ 来る前は敵対心を持っていたが、人間性や礼儀、思いやりの心など見習うべきところが多く、韓国も日本のようになれば大きな成長をとげられるのではないかと感じた。