【JENESYS2.0】日本大学生訪韓研修団第2団(2015.3.17~3.26)

JENESYS2.0の一環として日韓文化交流基金で選抜、派遣した日本大学生訪韓研修団20名が訪韓し、3月17日から3月26日までの9泊10日の日程で研修を行いました(団長:近畿大学 総合社会学部 須賀井義教准教授)。[@pause]
一行は滞在中、大学訪問やホームステイ、地方での文化体験を通して、韓国の文化や社会について学んだ他、在韓国日本国大使館公報文化院を訪問し、日韓関係についても知識を深めました。
主催:公益財団法人 日韓文化交流基金、韓国国立国際教育院
実施:韓国ソウル神学大学校
※「JENESYS2.0」の概要についてはこちらをご覧ください。

<日程>
3月16日(月)
研修前オリエンテーション
17日(火)
金浦空港より入国、韓国国立国際教育院訪問、ソウル神学大学学生との対面式・懇談会、ソウルNタワー見学
18日(水)
ソウル神学大学訪問(講義聴講:「東アジア平和を作る韓日青年」、「若者に冷たい社会、子やさしい親-日韓比較-」・キャンパスツアー・ソウル神学大学学生との交流)、景福宮・韓国国立民俗博物館見学
19日(木)
世宗大王像見学・北岳山ハイウェイ、青瓦台車窓見学、在韓日本大使館 公報文化院訪問、東遠F&B鎮川工場訪問(工場見学・キムチ作り体験)、韓国服試着体験
20日(金)
JSA安保見学館見学、国連軍司令部軍事休戦委員会セキュリタリーからブリーフィング、板門店・DMZ・第3トンネル・都羅展望台見学、ソウル神学大学校でのホームステイ対面式
21日(土)
終日ホームステイ
22日(日)
ホームステイ先から集合、韓国民俗村見学(伝統武芸等観覧・伝統笛タンソ作り体験・伝統弓体験)、世界文化遺産(華城行宮・水原華城)見学
23日(月)
サムスン・イノベーションミュージアム見学(企業食堂体験)、延世大学訪問(講義聴講:「地雷問題について」、キャンパスツアー)、慶州へ移動
24日(火)
韓国国立慶州博物館・世界文化遺産(石窟庵、仏国寺)見学、釜山へ移動
25日(水)
海東龍宮寺見学、釜山地方警察庁訪問、朝鮮通信使歴史館見学、釜山韓日文化交流協会訪問(講義聴講「未来指向的な韓日交流と朝鮮通信使の精神」、夕食会)、研修感想報告会・修了式
26日(木)
金海空港より出国、成田空港到着入国

 

研修初日。朝早く羽田空港を出発した日本大学生訪韓研修団第2団の団員は、金浦空港到着後、韓国側主催団体である韓国国立国際教育院を訪問し、同教育院についてのレクチャーや日韓の青少年交流についての重要性を伺い、研修目的やその意義を再確認している様子でした。今回の研修実施団体であるソウル神学大学のチェ・スンユク教授から「この研修がみなさんにとって韓国を偏見なく理解する機会となり、新しい歴史を作っていって欲しい」という激励のお言葉をいただき、団員たちは、より一層期待に胸を膨らませている様子でした。その後、同大学の学生チューターと懇談会を行い、Nソウルタワーを見学しました。

    
日程2日目はソウル神学大学を訪問し、特別講義「東アジアの平和を作る日韓青年」と「若者に冷たい社会、子やさしい親-日韓比較-」について聴講しました。そのなかで同大学ユ・ソクソン総長は「遠方から友が来てくれるのは楽しい」と訪韓団を歓迎してくださいました。同大学の学生たちとは、グループ別に交流しながら学食でランチを食べ、キャンパスツアーを行いました。その後、全員でバスに乗り込み、景福宮に到着するまでの間、団員たちが訪韓前に作成したレポートを発表しました。内容は韓国の政治や経済、徴兵制度等、難しい問題かなとも思われましたがバスのあちらこちらから熱く語り合う声が聞こえてきました。小雨の降る中到着した景福宮と韓国国立民俗博物館でも日韓の学生同士、意見交換をしながら見学することができました。

日程3日目の朝は、世宗大王像を見学した後、北岳山ハイウェイ、青瓦台を車窓から見学しながら在韓日本大使館公報文化院に到着しました。最初に同院高橋建吉調査員から大使館や広報文化院についてのブリーフィングを受けました。質疑応答の時間には「大使館ではどのような文化事業を行っているのか」、「第3国への経済的、技術的協力での大使館の役割とは何か」、「若い世代に望むことはどのようなことか」等、幅広い質問がされましたが、同席された同院の宮田起三弘副院長、常盤木祐一書記官、篠田智志書記官が、ご本人の体験談を織り交ぜながら説明してくださり団員たちには、とても貴重な人生のアドバイスになったようです。

   
午後からはキムチや海苔などの食品加工でも有名な「東遠F&B」鎮川工場を訪問しました。こちらでは、社員食堂でお昼をいただいた後、工場長から韓国の食文化やキムチについてのブリーフィングを受け、団員待望のキムチ作りに挑戦しました。実際に作業をしているスペースを見学しながら更衣室へ向かい衛生服に着替えた団員は、一層気合が入ったのかキムチを漬ける姿も堂に入ったものでした。出来上がったキムチは3日程で食べ頃になるとのことで翌日からのホームステイ宅へのお土産としてしっかり梱包してもらいました。 

美味しいキムチを漬け終えてソウルに戻ると韓服体験が待っていました。場所はソウル中心部の禮智院。韓服には昔、年齢や階級により決まりがあったそうです。団員たちは婚礼衣装や子供用の韓服など様々なデザインの韓服を身にまとい、帽子や小物まで合わせて体験しました。色とりどりの韓服の説明を聞いているうちにタイムスリップして踊り始める団員の姿もありました。

日程4日目の朝は予定より早くホテルを出発し、韓国の非武装地帯DMZに向かいました。当日は米韓軍事演習の期間中ということもあり、近づくごとに団員の緊張感は高まっていたようでした。最初に見学したJSA安保見学館では、延世大学のチョ・ジェグク教牧室長とチョン・ミヒョン教授ご同行のもと国連軍司令部軍事休戦委員会のセキュリタリーからブリーフィングを受けました。      

その後、板門店にある本会議場や帰らざる橋を見学し、トロッコで第3トンネルを下り、都羅展望台から目に見えない軍事境界線を実感しました。団員からは「これまでは話だけの世界だったが、実際にこの地に赴き、隣国との問題を自分の目で確かめることができて有意義だった」、「南北分断について強く意識するようになり、改めて勉強しようと思った」という意見が聞かれました。
 

夕方からはソウル神学大学でのホームステイ対面式でした。今回は同大学の学生チューターのお宅に2人ずつ訪問しました。日程6日目の朝の集合時間まで2泊3日と短い間でしたが、韓国のお母さんの家庭の味をたらふくいただき、日本との生活習慣の違いを肌で感じ、「韓国がより近く感じた」、「もっと韓国が好きになった」という感想が沢山寄せられました。「韓国社会のなかで育まれる日本にはない韓国ならではの美徳を感じ尊敬するようになった」という団員もいました。
   

日程6日目は水原にある韓国民俗村で韓国伝統文化体験の一日でした。まずは韓国伝統の農楽の演奏と綱渡り、伝統武芸を見学した後、韓国伝統笛「タンソ」作りに挑戦です。韓国留学時代にタンソをならっていたという須賀井団長から的確なアドバイスもあり、なんとか音はできるようになりましたが、曲を演奏するまでにはもう少しかかりそうでした。午後からは本格的に韓国伝統の弓も体験しました。日本で弓道をしていた団員も少し勝手が違うようなのか的の真ん中に矢を射るのは至難の業だったようです。
 

水原では世界文化遺産に登録されている水原華城と華城行宮も見学しました。長く続く城壁や立派な城門、色鮮やかな建物の中には当時の風習や生活が窺える装飾品や衣装などの展示もあり、韓国の伝統的な生活や建築技術にも触れる機会になりました。
   

そして日程7日目はサムスン・イノベーションミュージアムで電子産業の歴史等を見学後、サムスン電子の社員食堂でランチをだきました。ちょうどお昼時間と重なり団員たちは勢いに圧倒されながらも、特別な雰囲気を楽しんでいる様子でした。
 

午後から訪問した延世大学では、ホームステイホストだった神学大学の学生が出迎えてくれました。感動の再会の後は全員でチョ・ジェグク教牧室長から「地雷問題について」の特別講義を受けました。3日前にDMZを見学したばかりの団員は「より現実的に問題を受け止めることができた」、「これからも問題意識を持っていきたい」と話していました。その後、詩人ユン・ドンジュ詩碑・記念室を訪問しました。夕方から慶州へ行くために向かったソウル駅のホームでは団員との別れを惜しむホストの姿が感動的でした。

   
日程8日目、慶州の朝は空気も良く澄み渡っていました。爽やかな青空の下、世界文化遺産である石窟庵と仏国寺、韓国国立慶州博物館を見学しました。案内ガイドの説明に真剣に聞き入り、仏像の顔を覗き込む団員の様子は、日本で調べただけでは感じ取ることのできない韓国の風土や慣習を体感し、さらに韓国を理解しているように思えました。午後から釜山へ移動した団員は、賑やかなジャカルチ市場と海をみてソウルや慶州とはまた違う韓国を体験しました。南浦洞の自由散策時間には、現在、釜山に留学している昨年の大学生訪韓研修団団員たちが駆けつけてくれました。団員たちの率直な質問や疑問に対して、先輩団員からのアドバイスを受ける有意義な時間となりました。
 
   
日程9日目も忙しい日程を過ごした団員たち。まずは海岸沿いにある仏国寺とは違った雰囲気のお寺、海東龍宮寺を見学した後、釜山地方警察庁を訪問しました。日本の大学生が訪問するのは初めてということで「今回の訪問を契機に釜山について深い関心を持ち、今後、日本と韓国のお互いの発展のために、より一層近い関係、良い関係を築いていけるよう、若い世代の大学生の皆さんに期待しています。」とクォン・ギソン釜山地方警察庁長から激励のお言葉をいただき、警察庁の皆さんが大歓迎してくださいました。その後、韓国と日本の警察のイメージや現状について意見を交わす時間やコールセンターと交通管制センターを見学し、射撃シミュレーションも行いました。射撃で一番高得点を取ったのは将来日本の警察官僚になりたいと話していた団員でした。
     
 
韓国最後のランチを釜山地方警察庁の食堂でいただいた一行は、朝鮮通信使歴史館を見学してから釜山韓日文化交流協会に向かいました。同協会セミナー室からは釜山港が一望でき、活気が感じられます。パク・ミョンフム理事長からは「未来指向的な韓日交流と朝鮮通信使の精神」についてのお話を伺いました。ある団員は「朝鮮通信使が200年も続き、現在の日本と韓国があるように、これから先の200年、私たちが日韓の架け橋となり、今より良い関係になるよう努力していきたい」と感想を述べていました。
    
 
講義終了後、釜山名物のクッパと激辛の青唐辛子を食べて韓国パワーを改めて感じて、最後は研修を締めくくる感想報告会と修了式を行いました。団員からは以下のような感想が述べられました。
・訪韓前、韓国の人は自己中心的で気が強いと聞いていたので、うまくやって行けるのか不安だったが、実際に触れあってみると目上の人を敬い、「人によくしよう」「尽くしてあげよう」という気遣いとおもてなしの気持ちが強いと感じ、不安が消え、個人的にも友人になるにはとてもいい人達であると確信することができた。
・韓国からの留学生は政治的な話はしたがらないが、韓国で出会った学生は政治に関心が強く、自分の意見も発表していて印象が変わった。
・勉強に熱心で、徴兵の試練を乗り越え淡々と義務を果たし、それから復学して学問を続けようとする姿勢は、自分の環境の甘さに気付かさせてくれる格好の材料となった。
・板門店の見学では、南北分断という問題がいかに深刻な課題であるかということを身を持って感じる貴重な経験となった。
・異文化に触れた時、自国の文化との違いで相手を非難するのではなく、お互いを認めていかなければならないのだと感じた。
・今の日本では少なくなってしまった人と人とのつながりを大切にする文化がいまだに残っていると感じた。
・過去を清算することは難しいが、自分たちのような若い世代が政治を執るときになった時、直接戦争を体験してこなかった私たちだからこそ韓国と「新しい関係」を作ることができると思う。そのためにも、もっと多くの人にこのようなプログラムに参加してほしいと思う。

   
最終日、金海空港から成田空港に到着した団員たち。今回の訪韓研修は、韓国について、日本について、自分自身について、様々なことを感じ考える時間にもなったことでしょう。それぞれのホームタウンに戻り、この研修を通して経験した異文化交流の楽しさや学びの深さをより多くの方と共有できるように、また、日韓の明るい未来のためにも今後も活躍してくれることと思います。