「日韓交流 若者へのメッセージ」第2回 小林直人さん

関心から感動へ

ソウル KIM & CHANG

金・張 法律事務所

常任顧問 小林 直人


 「ありがとう。また会いたい!」と別れを惜しみ、いつまでもバスに乗ろうとしない韓国の高校生たち。
 「これが連絡先。きっと会おうね!」と抱き合ってメモを渡す日本の高校生たち。

 2004年1月、日韓両国の経済協会主催「第1回 日韓高校生交流(経済)キャンプ」行事。東京にやって来た韓国の高校生50人が4泊5日の日程を終えて帰国のバスに乗車する直前、見送る日本の高校生62人の若者たちと涙を流し、再会を誓いながら別れを惜しんだ光景が今も目に焼き付いています。

 大学卒業以来、商社で経済の現場一筋だった私にとって、この時目にした感動の光景は忘れられないものとなり、その後の人生を一変させることになりました。日韓経済協会で準備してきた1年間の苦労は跡形もなく消え、この時に芽生えた情熱がその後、国際交流基金ソウル日本文化センター所長公募の機会に志願する大きな動機となりました。

 私にとっても人生の転機になったこの経験は、若者たちにとっても大きなきっかけとなりました。その後、高校生キャンプに参加した若者たちは両国の国境をいとも簡単に越えて交流を深め、「自分たちの日韓関係」を創るため情熱を傾け議論を深めて行ったのです。大学生になっても両国でそれぞれ自発的に組織化を進め、2006年からは「日韓学生未来会議」を発足させ、今も後輩たちが1年に1度欠かさず日韓間の未来会議を自主開催しています。

 このキャンプに参加した高校生の多くは、おそらくそれまで日韓それぞれの国内での教育やメディアを通じて何となくイメージを持っていただけだと思います。しかし未来会議の準備や当日の議論を経る過程で「外国の同世代の若者が何を感じ、何を考えているのか」を互いに語り明かすことにより、相手への関心、相手国への疑問を直接ぶつけあえるようになり、メディア等で聞きかじった内容で判断するのではなく、自分自身で情報の確認ができるようになり、生涯かけがえのない「ホットライン」となりました。

 このウェブコラムを目にされた若い皆さんは、報道やネットで知る日韓関係におそらく「何故?」と関心・疑問を多く持っておられる事でしょう。今はその思いをどこかにぶつけたくても、残念ながら触れ合う感動は叶いません。世界は今、新型コロナ19に必死に立ち向かっている真っ最中で、日韓間に限らず外国との往来制限・遮断が続いており、すべての「直接」交流が延期や中止を余儀なくされています。しかし、関心のある皆さんは機会を通じて知り合った同世代の友人たちと「いつか必ず」直接会える日が来ます。その時こそ生涯忘れえない「ひとしおの感動」が生まれる事と信じています。

 当時の高校生たちが自発的に発足させた未来会議も今年は15年目、組織として成長して来ました。先輩たちは既に社会人になった今も忙しい時間を縫って未来会議に駆けつけ、体験を共有しています。まさに国境を越えて同じ世代の人間として、どちらの国が良いとか悪いとか、勝ち負けや白か黒か、ではなく、「国家とは?個人とは?」の議論を通じて常に学びあい、互いに尊重していく姿に私はいつも勇気をもらっています。

 若い人たちとの関わりは「感動のある交流は必ず甦る」揺るぎない確信を与えてくれました。皆さんには私が大人になって経験した関心や感動を出来るだけ若いうちから経験してもらいたいと願っています。「あなたのいる国」に対する関心を交流によって感動に育ててほしいと思います。その感動の拡がりが、言葉だけでない真の意味で両国の相互理解を深め、相互信頼・尊重となり、遂には若い力を合わせて「新しい未来を築く創造力」になるものと信じています。

 若い皆さんの交流の継続と実行力に、私は自信をもって、日韓の未来関係を託したいと考えています。