「日韓交流 若者へのメッセージ」第3回 カン・ハンナさん

韓国と日本どっちが好きですか聞きくるあなたが好きだと答える

カン・ハンナ


 これは、去年の12月に出版した私の第一歌集『まだまだです』(KADOKAWA、2019年)に収録されている短歌の一首です。 
 まず、少し自己紹介をさせていただきます。私は日本に来て9年目となる、韓国出身のタレントで歌人でもあります。
 また、横浜国立大学大学院の博士後期課程で韓国と日本を中心に国際社会文化を研究しています。来日した2011年にはひらがなさえ読めなかった私ですが、今は1300年以上の歴史を持つ日本の伝統文学、短歌を通じて自分の思いを伝えており、日本語が母国語ではない初めての外国人歌人として、日本で本を出版することができました。

 もちろん、他国の日本で自分の道を見つけ出し、目標や夢に向かって進んでいくのはそんな簡単なことではありませんでした。今までの9年間もそうでしたし、これからも色々と覚悟が必要だと思っています。ただ、これを読んでくださる方々に私が一番伝えたいのは、日本だから、韓国だからといった固定観念を持たないでほしいということです。

 私は日本に来た時に、「すべてを自分の目で見て、自分で感じて、自分で判断する」と決めました。特に、情報量の多い日本と韓国の間だからこそ、そう心掛けたかもしれません。ここで私が自信を持って言えるのは、自分の経験を大事にしていくと、もっと素敵な出会いや出来事が訪れますし、今まで想像もしてなかった新たな未来がきっと待っていると思います。

 私にとって日本と韓国はどっちも大切な場所です。それは「国」という意味ではなく、私が愛する人々、そして心から感謝している人々がいる場所だからです。上の短歌はその思いを込めた一首となりますが、これからも私は日本人のあなた、韓国人のあなたではなく、「あなたとしてのあなた」の一人一人と向き合っていきたいなと思います。
 そして、今の時代に私と同じ気持ちを持つ人々が日本と韓国でどんどん増えることを、心から願っているのです。

カン・ハンナ(강한나)
 1981年韓国ソウル市生まれ。来日9年目。NHK Eテレ「NHK 短歌」レギュラー出演中。角川短歌賞に3年連続入選(第63回角川短歌賞次席)し、第一歌集『まだまだです』(KADOKAWA)を出版。
カン・ハンナさん オフィシャルブログ
https://ameblo.jp/hannah-kang/