「日韓交流 若者へのメッセージ」第4回 高麗文康さん

日韓交流に心ある若者たちへ

高麗神社宮司 高麗文康


 現在のように国際交流が難しい環境の中にあっても、心ある人々は様々な方策を使って交流を進めているのだろうと思います。現代は、それぞれの国々を訪ねることができなくても、人と人のつながりを保つ、あるいは深めていくことができるシステムが構築された社会になりました。これはとても幸いなことだと思います。人と人に信頼関係があれば、国家間の交流を妨げる要素を凌駕することが可能だからです。

 一方で国家間には常に課題が存在します。そして現代は意識さえ持てば、誰でもその課題を知ることができる環境があります。これも又、幸いなことだと思います。大切なことは、国際交流に心ある人々が、国家間の課題に積極的に取り組んでいくことだと思います。課題を考える過程の中で、課題の背景にある歴史、国民性を学ぶことになるでしょう。学んだ知識や触れ合った体験がより一層交流を深めるエネルギーになります。そして、深められた交流は、両国間の課題をより良く解決する力になってゆきます。

 国交があれば、必ず課題が生まれます。課題そのものは解決に向けた真摯な努力が必要ですが、課題があることを深刻に考える必要はありません。人間関係がそうであるように、課題が存在することは交流の証であり、動機でもあるからです。日韓交流に心ある若者にこそ、両国間の課題に積極的にアプローチをしてほしいと思います。
 
 解決に向けてどちらか一方だけが努力すべき課題など、無いのです。

こま ふみやす
1966年生。1990年、國學院大學文学部神道学科を卒業、2007年1月20日、高麗神社宮司を拝命。高麗神社祭神高麗王若光(こまのこきしじゃっこう)を開祖とする高麗家の60代目当主。合気道五段。著書に『高麗神社』(さきたま文庫・共著)、小説『陽光の剣~高麗王若光物語』(幹書房)がある。