「日韓交流 若者へのメッセージ」第12回(最終回)  古家正亨さん

“五感”で感じ、韓国に対する自分自身の“確信”を持って

ラジオDJ、テレビVJ、MC、韓国大衆文化ジャーナリスト

古家正亨

brank

 このコラムの執筆の依頼があった際、誰に、どんなメッセージを伝えるべきなのか。そして、僕が届けられる言葉に、どんな意味があるのだろうか・・・。改めて、その答えを導くために、自然と、自分自身の約20年の歩みを振り返っていました。

 今、韓国に留学しよう、韓国を知ろう、韓国と繋がろうと考えているあなたは、きっと韓国のエンターテインメントやカルチャーに興味・関心を持ち、それをきっかけとして、日韓の橋渡しとしての活躍に胸躍らせているのではないでしょうか。TWICEをはじめ、数多くの日本人が韓国に渡り、K-POPアイドルとして活躍している姿を見て、自分もこうでありたいと努力している人もいるでしょう。
 僕自身も、韓国に留学した90年代後半、そのきっかけは韓国のエンターテインメントの魅力にハマってしまった・・・まさに“音楽”に夢中になったからでした。ただ、今とは大きく異なり、その頃はインターネットも普及していませんでしたから、ほとんど情報もなく、韓国を知ろうとする雰囲気すらなかった日本で、積極的に韓国を理解するには、韓国に渡るしか、その方法はなかったに等しかったのです。

 当然、当時はよほど大きな理由がない限り、留学先として韓国を選ぶ日本人は数少なく、とにかく韓国語をしゃべる日本人は珍しがられました。だからこそ、現地の人がそんな韓国を学ぼうとする日本人(僕)に親切にしてくれたでしょうし、そこで生まれた数々の出会いと思い出は、僕にとって今でもお金に換算できない、かけがえのないものとなりました。
 しかし、その韓国で過ごした約2年は決して“楽”ではありませんでした。むしろ苦労の方が多かったと言っていいでしょう。言葉の問題だけではありません。日韓の人々が文化・習慣をはじめ、通じ合えることが多いからこそ、本質的に理解しあう前に、互いが理解し合っていると、双方が思い込んでしまうという状況に陥りやすいのです。そして、そこから様々な問題や葛藤が生まれるのです。
 あれから20数年。自ら開拓者として、日本で韓国のエンターテインメントの魅力を伝えることに全力を掲げ、様々な方法でそれを続けてきました。勿論、ここでも大きな壁に、何度も当たっては乗り越えてきましたが、そんな僕でも、その本質にまだ辿り着けていないような気がします。それほど、日本と韓国、日本人と韓国人は似て非なるものなのです。

 個人的な見解としては、きっと互いが納得できる“ベスト”な答えを日韓間において導き出すのは、不可能ではないかと思っています。しかし、互いが譲歩できる“ベター”な選択には辿り着けると思うのです。そして、その譲歩のためには、韓国を知る努力だけではなく、日本人として日本、そして日本人というものに対する理解を深めなければ、そのヒントすら見つけられないのです。
 技術の進化に伴い、SNSやインターネットを介して、韓国からリアルタイムに、今、その瞬間起こっている出来事を、日本に住んでいても共有することが可能な時代になりました。ネット上には、韓国に関する様々な情報が存在しています。しかし、先に挙げたように、その情報を受容し、理解するには、多くの経験と知識を必要とします。ですから、そんな時代だからこそ、自分の五感で直接感じ、その情報が自分として正しいことなのかを確かめるために“行動”して欲しいのです。
 決して簡単なことではありません。しかもこのコロナ禍の中で、数々の制約ある中、果たして何ができるのか・・・でも、必ず、その道は開かれています。

 戦後最悪と言われる2021年3月現在の日韓関係ですが、今、これを読んでくれている人であれば、きっとあなたの力で、いつか、“ベスト”ではないかもしれませんが、戦後最良と言える日韓関係を築いてくれるはずです。

brank

ふるや まさゆき
1974年北海道生まれ。
約2年の韓国留学を経て、2000年から北海道FMノースウェーブで韓国音楽専門番組「Beats ~Of-Korea」を立ち上げて以降、ラジオを中心にテレビ、ネット番組などを通じ、韓国の大衆文化の魅力を日本で紹介。2009年には日本におけるK-POP普及に対して韓国政府より文化体育観光部長官褒章授章。上智大学大学院 文学研究科新聞学専攻前期博士課程修了。著書に「Disc Collection K-POP」(シンコーミュージック・エンターテインメント)、「韓国ミュージック・ビデオ読本」(キネマ旬報)、「K-GENERATION~K-POPのすべて」(DHC)、「「古家正亨の韓流塾」(ぴあ)、「古家正亨のALL ABOUT K-POP」(ソフトバンク・クリエイティブ)など。

Twitter @furuyamasayuki0